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顎偏位症(がくへんいしょう)

顎偏位症とは

下顎(かがく)の位置(顎位)が、正常な位置からわずかに偏る(かたよる)状態を、「顎偏位症」(がくへんいしょう)といいます。
偏る量は10μmぐらいから、2〜3mmにまで及ぶ場合もあります。
(1マイクロメートル=1000分の1ミリメートル=0.001ミリメートル)

顎偏位症という名称は一般的に使われているものではなく、おそらく1992年に出版された「顎偏位症」市波治人編という書籍で初めて使われた言葉だと記憶しています。
これから説明するさまざまな症状が関連するものなので、「顎偏位症候群」(がくへんいしょうこうぐん)とも言えます。

なお、顎偏位症は、「顎関節症」(がくかんせつしょう)や「顎変形症」(がくへんけいしょう)とは異なります。

顎偏位症の原因

顎偏位症は、顎の位置を決める3つの顎位のバランスが崩れることによって起こります。
3つの顎位とは「咬合位」(こうごうい)、「顆頭位」(かとうい)、「筋肉位」(きんにくい)です。この3つの顎位のバランスが崩れて、それぞれの顎位の持つ域値を越えた場合に、特徴的な症状が現れてくるのが顎偏位症なのです。

顎位については、「院長ネタ帳」の「"あご"は宙ぶらりん~顎位の話~」にくわしく書いてありますので、参考になさってください。

「"あご"は宙ぶらりん~顎位の話~」はこちらLinkIcon

顎偏位症の症状

顎偏位症では、顎の偏り(かたより)のほかに、以下のような、さまざまな症状を伴っていることがあります。
その一方で、全く症状が現れないことも多くあります。
顎偏位症の症状は、他の疾患が原因である場合も多く、慎重に診断をする必要があります。

口腔内症状
歯を咬み合わせると痛む(咬合痛)
歯がしみる(冷水痛=冷たいものがしみる、温熱痛=あたたかいものがしみる)
知覚過敏
咬み合わせるとズレる感じがある
歯が割れる
歯ぎしりや、くいしばりがある
顎関節症状
顎の開け閉めで、関節から音(クリック)や雑音がする
顎の開け閉めが、痛くてできない
筋肉症状
顎がだるい
頭痛がする
肩がこる

これらの症状の出現を左右する原因として、習慣的な姿勢の悪さや、頬杖をつくなどの癖、持続的な精神的緊張などがあり、通常では発症しない程度のわずかな偏りでも、大きな症状として現れることも多くあります。

偏位が許容範囲内

「咬合位」、「顆頭位」、「筋肉位」にわずかな偏位がみられます。医学的には「域値」(いきち)の範囲内なので症状は現れません。


咬合位と筋肉位で範囲を超えている

「咬合位」と「筋肉位」で、域値の範囲を越えています。咬合痛や知覚過敏と共に、片頭痛を伴うことがあります。


三顎位すべてで許容範囲を超えていて、かつ許容範囲が狭い

「咬合位」、「顆頭位」、「筋肉位」のすべてで域値の範囲を越えており、なおかつ域値の範囲自体も狭くなっています。歯の痛み、顎の痛み、頭痛や肩こりなどの症状が強く現れることがあります。

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顎偏位症の治療法

顎位の偏りを補正することが、根本的な治療になります。
多くの場合、咬合調整という咬み合わせを調整する方法や、スプリント療法で「咬合位」を改善することで、「顆頭位」と「筋肉位」を補正することができます。
しかし、「筋肉位」は全身の重心の影響を受けて、日々、適正な顎位が変わってしまうので、補正することがとても難しい治療になります。また、完治するには、数年以上に渡る非常に長い治療期間が必要になってきます。

対症療法としては、鎮痛剤の服用や、筋弛緩薬剤の投与、頭頚部筋のマッサージなどが効果があります。

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顎偏位症の予防法

顎偏位は大なり小なり誰にでもあり、それが発症するかしないかの違いだけなので、残念ながら特効薬のような効果的な予防方法はありません。
しかしながら、習慣的な姿勢の悪さをできるだけ直すようにしたり、頬杖をつくなどの癖をやめたりするだけでも、多少の効果は見られます。
持続的な精神的緊張などがある場合、できるだけリラックスするように努めたり、身体を動かし、筋力を付けたりすることで予防できることがあります。