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ボツリヌストキシン療法

ボツリヌストキシン療法とは

ボツリヌス菌が産生する毒素(ボツリヌストキシン)が持つ筋弛緩作用を応用して、咀嚼筋に直接注射することで筋の異常緊張を和らげ、歯ぎしりや口腔周囲の不定愁訴を軽減させる治療方法です。
ボトックス注射などと呼ばれることもあります。
歯科では健康保険適用外ですが、医療の分野では健康保険適用で、斜視、眼瞼痙攣(まぶたがピクピクする)、痙性斜頚(肩こりなどで、いわゆる首の回らない状態)、ジストニアなど、さまざまな疾患に利用されている安全性の高い治療法です。

ボツリヌストキシンの作用機序

① 神経終末(シナプス)では、脳からの指令で神経伝達物質(アセチルコリン)が放出されて、筋肉側のコリン作動性受容体に結合することで、脱分極が起こり筋収縮が行われます。

② 注射によってボツリヌストキシンが神経終末に送られ、受容体から取り込まれます。

③ ボツリヌストキシンが神経終末のSNAP-25というタンパク質を変性させて、アセチルコリンの放出を抑制し、筋の収縮が行われなくなります。

④ 数ヶ月経つと周囲に側枝が作られ、徐々に伝達が再開され筋収縮が行われ始めます。その後作用を受けた神経終末の機能が回復すると側枝は退縮します。

ボツリヌストキシン療法の費用

歯科での刺入は、健康保険適用外ですので、治療費はご自身で全額ご負担いただきます。

保険外診療
左右咬筋刺入:ボツリヌストキシン40単位
合計 35,000円(消費税込み)

使用製剤

【A型ボツリヌストキシン製剤】


*薬剤は変更になる場合があります

【参考】

  • A型ボツリヌストキシンはボツリヌス菌が産生する物質で、菌自体ではありませんので、ボツリヌス症を起こすことはありません。
  • ヒトLD50値(体重70kg):5000単位(2.01jg)です。
  • 美容外科で有名なBOTOX(ボトックス)もA型ボツリヌストキシン製剤です。
  • Neuronox、Botulax等はKFDA(韓国食品医薬品安全庁)で認可され、安全性も認められていますが、日本では未承認薬となります。

治療の手順

【事前の準備】

  1. 睡眠中の歯ぎしりの度合いを筋電計検査(健康保険適応)で計測します。
  2. 事前に治療の詳細について説明を行い、確認書にご署名をいただきます。
  3. 製剤準備の都合上、施術日をご予約いただきます。

【施術当日】

  1. 体調を確認させていただきます。
  2. 刺入部位の皮膚を消毒します。お化粧をされているかたは、刺入部位付近のお化粧等を拭き取っていただきます。
  3. 刺入部位をマーキングし、刺入の痛みを緩和するためにアイシングを行います。
  4. 通常片側1筋肉単位に、0.1ccを5箇所(左右合計1cc:40単位)刺入します。
  5. 軽く揉んで製剤を分散させます。

【術後の注意事項】

  1. 施術後、血行性拡散を避けるため、多量の飲酒・運動・サウナなどは翌日まで避けてください。
  2. 注射部位は、翌日まで強く揉まないでください。

経過観察

1週間後
刺入部位の予後および筋肉収縮の効果を、触診にて確認します。
3ヶ月後
再び筋電計検査を行い、効果判定を行います。
6ヶ月後
効果の減退度を診断します。

ボツリヌストキシン療法を受ける前に

禁忌事項

  1. 妊娠中または、妊娠している可能性のあるかた、授乳期間中のかたは受けられません。
  2. 妊娠する可能性のあるかたは、投与中および最終投与後2回の月経を経るまでは避妊を推奨されています。
  3. 男性は投与中および最終投与後3ヶ月は避妊を推奨されています。

術後の注意事項

  1. 稀に刺入した部位に発赤が起こることがあります。
  2. 咬筋刺入後に、側頭筋の代償活動による片頭痛が発生することがあります。
  3. 筋弛緩の効果は一般的に、刺入後1週間頃より発現し、3ヶ月程度持続し、6ヶ月程度で消失します。
  4. 刺入を複数回行うことで、持続期間が延びるという報告があります。
  5. 治療効果には個人差があり、十分な効果が得られない場合があります。

治療日に関する注意事項

  1. 製剤の都合上、同時間帯にお二人の治療を行うため、治療日が未確定になる場合があります。
  2. 体調不良の場合は治療日を変更しますので、当日の朝までにご連絡ください。