歯の割れやすい部位
歯を失う原因として広く知られているのは、虫歯や歯周病といった歯の疾患ですが、そのほかに意外と知られていない大きな原因として、歯の破折(はせつ)があります。
歯の破折のほとんどは、歯に噛む力が強く加わった時におこりますが、まるで薪を割ったかのように歯が縦に割れてしまいます。
それによって口の中の細菌がヒビの隙間から根の奥にある歯槽骨まで入り込んで、炎症を起こします。
また、物を咬む力が歯にかかると、常に割れた部分に歪みをもたらすため、どんどん歯周組織を傷つけていきます。
最後には全く咬めなくなり、抜歯せざるを得なくなります。
歯の破折は、歯髄(歯の神経)が生きている場合と、歯髄を除去してある場合とでは、発生する部位が異なります。
歯髄が生きている場合は、歯冠(咬む部分)があるので、その噛み合わせ部分の谷や溝からヒビが広がっていきます。
それに対して、歯髄を除去してある場合は、歯冠に穴が開いているため、咬む力が歯根に集まってしまい、その結果、薄くなっていて力がかかる部位にヒビが入り、そこから一気に広がっていきます。
図の向かって左側、青の線は、歯髄が生きているときに起こりやすい部位で、右側の赤い線は、歯髄を除去してあるときに起こりやすい部位です。
一般的に、歯髄を除去してある歯は、構造的にも弱く、歯の質も劣化しているので、歯根破折を起こしやすい傾向にあります。
歯髄の除去をしたあとは、支台になるコアーという土台を立て、その上に冠(クラウン)をかぶせるという治療を行います。
その支台として一般的に使われるのがメタルコアーですが、それ自体が硬さを持っているため、歯に釘を打つかのように、歯根の破折を誘発してしまうこともあります。
歯の神経が残っているのといないのとでは、こんなにも歯の寿命に差が出ます。
「歯の神経はできるだけ抜かない方がよい」という意味は、ここにもあるということです。
2013.12.15更新