LinkIconHOMELinkIconネタ帳>院長のネタ帳・前歯と奥歯の微妙な関係

前歯と奥歯の微妙な関係

現代のヒトの永久歯は、28本〜32本あります。
そのうち「前歯」は8本あり、先端を上下で合わせて、食べ物を切り裂く役目を持っています。
「奥歯」は16本〜20本あり、表面の凹凸を上下で擦り合せて、食べ物を細かくすり潰す役目を持っています。
このように、前歯と奥歯は同じ歯でも、萌えている場所と形が異なり、役目も異なります。

前歯 上4本・下4本
さて、この前歯と奥歯。
役割が違うので、上下の歯を合わせるときの顎の動きも異なります。
前歯を使うときは「チョッピング」といって、まっすぐに先と先を当てる動きになります。擬態音にすると「カチカチ」。
奥歯を使うときは「グラインディング」といって、左右に擦り合せる動きになります。擬態音にすると「モグモグ」。
顎は、この「カチカチ」と「モグモグ」を実に巧妙に使い分けながら、次第に食べ物を飲み込みやすい形に潰していくのです。

奥歯 上8~10本・下8~10本
驚いたことに、前歯が仕事をしているときは、顎の動きが違うので、奥歯は仕事をしていません。同じように、奥歯が仕事をしているときは、前歯は仕事をしていません。
前歯と奥歯は、絶妙なバランスで役割を分担しながら咀嚼をしているのです。

もし前歯と奥歯の咬み合わせのバランスが良くなかったとしたら…例えば、咬み合わせの強さが、奥歯より前歯の方が少しだけ強かったとしたら?
奥歯ですり潰そうと「モグモグ」しようとしても、前歯が当たって顎のスムーズな動きを妨げてしまいますね。咬みにくくて物が食べられません。

しかしながら、前歯が当たるからといって、「咬み合わせにくいから、食べられないよ〜」なんて悠長なことは言っていられません。太古の昔から激しいサバイバルを生き抜いてきた私たちですから、意地でも咬もうとします。
そうなると、奥歯で咬んでいる間ずっと、前歯は強い当たりに耐えていることになります。
さらに言えば、食事以外の時、たとえば勉強中、難しい問題に歯を食いしばっているとき、寝ながら歯ぎしりをしているときなど、さまざまな場面で、同じように強い当たりを受け続けているのです。
そこまでくると、さすがの歯も耐えかねて、ぐらついたり、割れたりしてしまいます。

25年の臨床経験から申し上げると、奥歯が咬んでいるとき、上下の前歯は30μm(ミクロン)空いているぐらいがちょうど良いようです。(1ミクロンは1000分の1ミリ)
とても微妙な数値ですよね。
患者さんご本人は、毎日の咬み合わせに慣れているため、この微妙な当たりを感じることはまずありません。もし感じたとしても、ご自身で調整することは不可能です。
ですから、私たち歯科医師が、定期検診などの機会に咬み合わせのチェックを行うことは、とっても大切なことなのです。

2013.02.16更新