LinkIconHOMELinkIconネタ帳>院長のネタ帳・せっしょくえんげ?

せっしょくえんげ?

みなさん「歯」といえば、虫歯や歯周病といった単語がすぐに思い浮かべられると思いますが、「嚥下(えんげ)」という耳慣れない言葉や、「リハビリテーション」という言葉を聞くと、どこの担当?耳鼻咽喉科?内科?それとも整形?…
歯医者でそんな言葉を聞くことに戸惑ったり、もしくは違和感を覚えるかたもいらっしゃるでしょうか。

そうなんです。
「噛む」ことは自分たちの専門であるけれど、実はその次の動作である「嚥下(えんげ)=飲み込むこと」に関しては、ちょっと前までは専門外の話だと思っていました。
実際、37年前に歯学部を卒業した私は「せっしょくえんげ」なんて言葉さえ習っていません。

ここで改めてご紹介します。

食べ物を認識してから口に取り込むことを「摂食」(せっしょく)と言い、口の中で食べ物を飲み込みやすいように唾液と混ぜながら食べ物の塊を作り、その塊を飲みこんで胃に送るまでの動作を「嚥下」(えんげ)と言います。
簡単に言うと「食べ物を噛んで、モグモグして、ゴックンする」ということです。
この一連の動作は「摂食嚥下」(せっしょくえんげ)と呼ばれています。

考えてみれば、噛んだ後の食物は必ず喉を通って胃に行くわけですから「噛む」と「嚥下」は、切っても切り離せない関係。
体にとっては、とても大切な“一連の行為”のはずなんです。
どんなに最強の歯を持っていても、弱った喉でまともに飲み込めなければ意味がないですからね。

そんなわけで、常日頃から取り組んでいる「咬合」の次に学ぶべきは「摂食嚥下」だな…と頭の片隅で意識しながら日々の臨床(診療)に取り組んでいたら…!
なんと幸運なことに、それらを勉強する絶好の機会が訪れたのです。

ラッキーなことに「世界嚥下サミット」という、世界規模の学会と合同で行われる大会が開催されるというではありませんか!
しかも、それが東京でも大阪でもなく、名古屋で行われるという偶然!!
世界中の摂食嚥下のプロフェショナルたちが、名古屋に集まるんです。
こんなチャンスは、愛地球博以来だ!!
ワクワクが止まらない~~~!!!

というわけで2021年8月19日(木)から21日(土)までの3日間、診療をお休みさせていただき、スタッフ全員で「第26・27回 合同学術大会 日本摂食嚥下リハビリテーション学会」に参加いたしました。

早々にスタッフ全員の参加登録をし、自主勉強の時間を取って予習をし、お互いに情報を共有しあい、できる限りの準備をして臨んだ3日間。
たっぷりと摂食嚥下リハビリテーションの勉強に浸かることのできた貴重な時間でした。

え?今どきそんな大規模なイベントって「密」になるんじゃない?とご心配いただいたかもしれませんが、いえいえ、そこはちゃんと対策が講じてありました。
ほとんどの講演が、ネットで受講できる「ライブ配信」や「オンデマンド配信」でなされたので来場者は少なく、「密」になることはありませんでした。
それどころか、通常では1箇所に絞るしかない受講も、オンデマンド配信のおかげで複数の受講が可能になり、興味のある講演を余すことなく聞くことができたんです。

300を超える講演やシンポジウムから、私たち一般歯科で役立つテーマを選ぶことは容易ではありませんでしたが、大会が終わってからも、秋の夜長に院長室でいくつもの講演を受講し、摂食嚥下に食らいついておりました。
その結果、たくさんの知識を得ることとなり、また新しい発見もあり、自分なりに時間を費やして考え、これからの方向性を見出すことができたと思います。

特に注目すべきは「舌」です!

そう、時代は「舌」なんです!!
摂食嚥下の能力にとても大きな影響を及ぼす「舌」の働きは、いま、様々な分野からも注目され始めてきています。
これらの知識はスタッフとも情報を共有し、患者さんの健康寿命に寄与できるよう、既存のいろいろな舌の訓練法を参考にしながら、みなさんに分かりやすくて、続けやすくて、効果的な、そしてできれば楽しくできるような、オリジナルのトレーニングメソッドを開発していく予定です。
責任は重大ですが、自分たちに何ができるんだろうと模索しながら、また患者さんご自身の変化を共有しながら、ワクワクしつつこのプロジェクトを進めていきたいと考えています。

ゆう歯科クリニック 院長 伊藤 裕章
2021.09.11更新