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歯科専用CTが開く未来

現代医療のレントゲン診断において、CT(Computed Tomography)はとても有効な機械です。 3次元的にからだの状態を把握することができるからです。
1本の歯でも、見る方向によって、さまざまに形を変えます。


下の写真は時計回りに、下から見た歯、裏側から見た歯、横から見た歯、上から見た歯の写真です。同じ歯ですが、まったく見え方が違います。
通常のレントゲンでは、左下の画像だけで診断をすることになります。


歯は周囲を硬い骨に囲まれていて、病気を外から診断することが難しいため、CTによる診断はまさに最適である…はずなのですが、歯科用CTはこれまで、実はあまり普及していませんでした。
そこには経済的、技術的、物理的な大きな壁があったからです。
しかし、近年、それらの問題が解決されつつあります。
写真は、最近の技術進歩で通常の断層撮影装置(パノラマ撮影)と同じ大きさまで小型化された、歯科用CTです。


こちらが、歯科用CTで撮影した写真です。
コンピュータの性能が上がり、撮影画像を診断しやすいよう、さまざまな処理が行えるようになりました。今後、歯科疾患の診断と治療技術の向上に、大きく貢献していくことになるでしょう。


さて、タイトルに掲げた「歯科専用CTが開く未来」ですが、私は、以下の3つを、開かれた未来と考えます。

(1)被曝線量が抑えられる
歯科専用CTは、口腔周囲に限った撮影用に作られているので、とても被曝領域が少ないのが特徴です。さらにコーンビーム方式といって、通常の1次元の撮影(線で撮影)でなく、X線を2次元照射で撮影(面で撮影)するため、1回転するだけで照射を終えることができます。撮影時間も23秒と、通常のパノラマ撮影より7秒長いだけで済みます。

(2)負担金が少ない
3年前に歯科用CTが健康保険の適用を受けたことにより、CTの開発が一気に進みました。CTの撮影ができる病状や条件にはまだ制約がありますが、それが適合していれば、3割負担のかたで言えば、負担金3500円程度の安価でCT診断を受けることができます。

(3)治療がスムーズ
3次元で歯や骨の状態がわかるので、あらかじめ治療の範囲を絞り込んでおくことができます。したがって、治療部位を最小限に抑えられるだけでなく、病巣などを見逃す率も低くなり、治療を軽くすることができます。


CT撮影は、すべての患者さんに適用するものではありませんが、従来型の2次元によるパノラマ撮影装置では診断が難しいような症状を把握するのに、たいへん有効な方法であり、明るい未来が開かれたと思っています。

2013.04.29更新