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巷で噂のCAD/CAM冠

CAD/CAM(キャドキャム)とは、コンピュータ上で製品の設計を行い、コンピュータの制御によって加工製造を行う技術のことを言います。携帯電話から飛行機まで、その技術は広く用いられています。

歯科では、10年ほど前から、保険外診療として高品質なセラミック冠の製作などに用いられてきました。これまでは先進医療として、一部の大学病院だけで行われてきましたが、2014年4月から、いよいよCAD/CAMにより製作される「ハイブリッド冠」が、保険治療として提供できるようになりました。
今回のネタ帳は、先進の歯科技工所(ラボ)である名古屋市守山区の株式会社エース・デンタルさんの協力を得て、CAD/CAM冠ができるまでを密着取材してきました。


スキャニング
患者さんのお口から採取した歯型にLEDの光を当てて、その反射光から、歯の形をデータ化します。
スキャニングは、治療する歯、咬み合わせ、上の歯、下の歯と、4回繰り返して行います。


CADによる口腔内の再現
スキャニングした4つのデータを組み合わせて、口の中の状態を、正確にコンピューター上に再現します。


技工士による人工歯のデザイン
人工歯(かぶせる物=補綴物)と支台歯(土台になる歯)のマージンライン(縁がピッタリ合っているか)や、隣在歯(隣り合う歯)との関係、対合歯(咬み合う上下の歯)との咬み方など、コンンピュータ上で詳細にデザインします。
ここでは、歯科技工士の高い専門技術と経験が要求されます。


ハイブリッドブロック
2014年5月現在、歯の原型となる「ハイブリッドブロック」が発売されているのは、GC社、松風社、3M社の3社です。
今回 保険導入されるものは、「材料がセラミックとレジンのハイブリッド」「歯の部位は小臼歯のみ」と限定はされていますが、これまで用いられてきた金属鋳造冠より美しく、HJKより硬くて丈夫です。

金属鋳造冠はについてはこちらからLinkIcon
HJKについてはこちらからLinkIcon


CAMによる削り出し
上記のハイブリッドブロックを「ミリングマシン」という機械に取り付けているところです。
このブロックを、機械が歯の形に削り出します。


削り出されたブロック
約30分で、歯の形が出来上がりました。


歯科技工士による調整
いくらコンピューターで正確に作られたものでも、そのままでは咬める歯にはなりません。
最後は、歯科技工士の熟練された目と手で微調整を行うことにより、晴れて適合の良い人工歯となるのです。


CAD/CAM冠が完成!
天然の歯と区別がつかないくらい、自然で、強度も高い歯ができました。
保険診療の適用になったことで、支台歯の形成(土台になる歯を削って形を整えること)や、型採りなどを併せても、治療費は3割負担の方で1万円程度です。

2014年5月現在では、ハイブリッド冠の材料である「ハイブリッドセラミックブロック」が超品薄であることと、CAD/CAMシステムを導入している歯科技工所が限られているため、希望されるかたにすぐに対応することは難しいかもしれませんが、半年後ぐらいには、多くの患者さんにCAD/CAM冠を提供できるようになると思われます。

2014.06.01更新