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「咬み合う」ということ

日常会話に「話が咬み合う」という言葉があります。
違う内容をもつものが、しっくりと合って、うまく事が進む意味で用いられます。
友達や恋人と話が咬み合えば、楽しい時間を共有できますし、仕事仲間で話が咬み合えば、成果が上がります。
人生において、さまざまな人間関係を経験する私たちにとって、「咬み合う」ことはとっても大切なことです。

その語源である「歯」においても、上下の歯がうまく咬み合うことは重要です。
たとえ個々の歯が正しい位置に萌えて、歯列がきれいに並んでいても、反対側の歯とうまく咬み合わなければ、食べ物はうまく咀嚼できず、消化もできません。

咬み合っている状態この写真は、上下の歯が正しく咬み合っている状態です。
上下の歯はそれぞれ同じ本数がありますが、1本1本の大きさがわずかに異なっているため幅の差が生じ、「咬頭」と呼ばれる山の部分と「裂溝」と呼ばれる谷の部分が互い違いに咬み合うようになっています。
これによって、上下の歯の間に隙間がなくなり、山の斜面を使ってすり鉢のように食物をすり潰すことができるのです。
私たち人類の祖先が、長い時間をかけて得てきた絶妙な歯の咬合面形態です。

咬み合っていない状態この写真は、歯が抜けたり位置がずれたりして、正しく咬み合っていない状態です。
これでは、上下の歯の間に隙間があるため、食べ物がうまく消化できません。
また、隙間に汚れが溜まりやすくなるために虫歯になったり、歯を支えている歯槽骨に異常な力がかかるために、歯ぐきに炎症が起こり歯周病を招いてしまいます。
更には、咬む筋肉や顎関節にまで不自然な力がかかり、頭痛や肩こりがひどくなったり、口が開かなくなることもあります。

ではうまく咬み合うようにするには、どうすればよいでしょうか?
虫歯や歯周病の場合は、歯磨きなどの口腔ケアがとても大事ですが、残念ながら「咬み合わせ」は歯磨きでは治りません。
咬み合わせの異常の原因は、祖先から引き継がれた生活習慣や遺伝の要素が大きいからです。
また、咬み合わせの理論(咬合理論)はまだ確立しておらず、研究発展の段階です。
そのために、患者さんも歯科医師も、咬み合わせの異常があることに気づかないで、状態を悪化させてしまうケースが多く見られます。
保険医療制度が、咬み合わせを極めて軽視しているという社会的背景もあります。

それでも私たち歯科医療に携わる者は、1日も早く咬み合わせの診断と治療法を確立させていかなければなりません。
咬み合わせの理論の研究と、それを促す医療制度とがうまく“咬み合って”、多くの患者さんの健康に寄与できるように、私たちは日々研鑽を積んでいきたいと思っています。

2012.11.20更新